私には失った友達がいた。
失ったと思っていた。
いや、亡くなったとかそういうんじゃなくて。

彼女は地元が一緒だったけれど、結婚して東京へ行った。
ほどなくして、ある事に熱中した。
彼女は私にもそれを熱心に勧めた。
私にはどうしても理解できなかった。
そのうち、彼女からの電話もメールも無視するようになった。
電話もメールも手紙も、だんだんと少なくなった。
そして連絡が途絶えた。

あれから、どれくらい経っただろう。
先日、他の友達から「同窓会をしよう」とお誘いがあった。
彼女の連絡先がわからないという。
「連絡できたら誘ってみるよ。」私は言った。
だが、はたしてどうだろう?
さんざん無視しておいて、今さら電話してもいいものだろうか。
ひどいことをした、と、罪の意識があった。

それでも思い切って電話をした。
つながった。
「もしもしー?久しぶりじゃねー。元気ー?」
彼女は、今までの沈黙がまるで無かったかのように普通に話してきた。
うれしかった。
昔に戻ったように会話が弾んだ。
うれしかった。
私は彼女を失ってなかった。
うれしい。